Gelfand pair の入門書

Gerrit Van Dijk,
Introduction to Harmonic Analysis and Generalized Gelfand Pairs (De Gruyter Studies in Mathematics),
De Gruyter Studies in Mathematics 36, Walter De Gruyter Inc, 2009.

私が Gelfand pair を知る切っ掛けとなったのは,
大学4年生の時に Van Dijk 教授の集中講義を受けたときでした.

Gelfand pair は次のように定義されます.
G をユニモジュラーである局所コンパクト Lie 群, K をそのコンパクト部分群とします.
対 (G, K) が Gelfand pair であるとは,
両側 K-不変な, G 上のコンパクト台を持つ複素数値連続函数の空間が,
合成積に関して可換環になるときに言います.
つまり, 岩堀-Hecke 環が可換であるとき, Gelfand pair と呼びます.

当時 Gelfand pair に関する入門書を探してみましたが見つからず,
Van Dijk 教授に尋ねてみると無いのが現状で, その時の講義ノートくらいでした.
そして, 当時 Van Dijk 教授は Gelfand pair の本も執筆されており,
翌年の 2009 年に出版されたのが本書です.

本書の構成としては, 第1章から第5章までが調和解析の内容で,
Gelfand pair については第6章以降に書かれています.
学部生でも読める内容となっており, 調和解析の予備知識がある読者は,
第6章から読んで差し支え無いと思います.

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函数の由来

現在, 数学用語のカンスウを漢字で表記すると,
「関数」が一般的に使われていると思います.

日本語としての関数は本来「函数」と書きます.
私は普段「函数」を使っています.

これは英語 function の中国における訳語である函数 (hánshù) をそのまま日本に持ち込んだものです.
function が漢訳される際に発音が似ている「函」の字をあて,
数学に関する用語として「函数」としたのではないかという説があります.

日本では, 昭和21年以降, 「函」が漢字制限による当用漢字に含まれなかったため,
同音の「関」という漢字が使われるようになりました.

また, 「函」は「箱」の意味を持つことから, 函数は「ブラックボックス」の働きとして捉えることができます.
つまり, ブラックボックスの入口から入ってくる x にある加工を施して,
出口に y を出力する対応のさせ方が函数として表されます.

photo credit: Function via photopin (license)

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楽しく論理を学ぼう!

中内伸光『数学の基礎体力をつけるためのろんりの練習帳』共立出版, 2002.

本書はタイトルに「数学」とあるように,
数学を学ぶために必要となる論理について書かれています.

数学科で必要となるのは論理力で, 物事を論理的に考えなければなりません.
そのため, 本格的な数学を学ぶ前に先ず, 論理 (logic) を学びます.

論理記号を使って, 命題の否定を考えたり, 命題の真偽を確かめるので,
慣れれば形式的に命題を操作できるようになります.
前半は命題論理や述語論理ですが, 後半から ε-δ 論法や集合論の基礎について書かれており,
数学の入門としてお薦めです.

また, 例題や演習問題の解答が丁寧で, 読者に対して親切だと思います.
全体を通して内容は良く, この本で勉強すれば基礎を身につけることができるでしょう.

そして, 著者の親父ギャグに所々遭遇しますが, それはそれで良い感じになっていると思います.

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