R3 上のラプラシアン Δ = (∂2/∂x2, ∂2/∂y2, ∂2/∂z2) は2階微分作用素ですが, これを R3 の球面極座標
x = rsinθcosφ, y = rsinθsinφ, z = rcosθ
に変換し, r = 1 に制限したものは球面 S2 上のラプラシアンと呼びます.
これを ΔS2 と書くことにします.
※ΔS2 を導くために直接, 球面極座標に変換して計算すると大変なので, 先ず
x = ρcosφ, y = ρsinφ, z = z
に変換してから, もう一度
ρ = rsinθ, z = rcosθ, φ = φ
のように2次元極座標変換を行えば, 計算が割と楽になります.
R3 上の複素係数 n 次同次多項式の空間 Vn は明らかに1つの複素ベクトル空間で,
ラプラシアン Δ の Vn への制限
Δ|Vn : Vn → Vn-2
の kernel を Un とおきます.
そして, Un の元 を n 次調和多項式といい,
さらに S2 に制限したものは n 次球面調和多項式と呼ばれます.
このように呼ぶと, 球面調和多項式 F(1,θ,φ) はあたかも ΔS2F = 0 となる多項式のように思えます.
しかし, 実際は ΔS2F = -n(n+1)F となることが計算で確かめられるので,
F(1,θ,φ) は ΔS2 の固有多項式であり, その固有値は -n(n+1) であることが分かります.
球面調和多項式は英語の spherical harmonics の訳ですが, このような性質を持っているため誤解を招く恐れがあります.
適切な訳語であるとは余り思えないので, 英語のまま ”spherical harmonics” と言えば良いかもしれません.