Hardy-Ramanujan 数

1729という数にまつわる有名なエピソードを紹介しましょう.
1900年台初頭, イギリスの数学者 Hardy (ハーディ) の話です.

療養中の友人, インドの数学者 Ramanujan (ラマヌジャン) を見舞いに行く途中,
乗ったタクシーのナンバーは1729であった.
私にとって, その数はどうでもいい退屈な数字であった事を Ramanujan に告げると, すぐさま彼は
「そんなことはありません. 大変興味ある数ですよ.
それは2組の3乗数の和で2通りに表すことができる最小の数です」

これは Ramanujan の数に対する特異な洞察力を物語るエピソードです.
実は, 1729は次のように表すことができます:
1729 = 123 + 13 = 103 + 93.

このことを即座に指摘した Ramanujan を
イギリスの数学者 Littlewood (リトルウッド) は
「全ての自然数は彼の友人だ」と評したと言われます.

このエピソードにより, 数1729は Hardy-Ramanujan 数と呼ばれています.

ちなみに, Hardy の話には続きがあります.
4乗数でも同様のものがあるのかを尋ねた所, Ramanujan はしばらく考えた後
「その答えは分からないけれど, それはすごく大きな数になるでしょう」

この直感は当たっており, 実際, 4乗数では次のようになります:
635318675 = 1584 + 594 = 1344 + 1334.

Ramanujan の天才振りは異常です.
まるで呼吸をするかのように感覚的に数式を扱っていたというか,
地球に舞い降りた宇宙人が気まぐれにその知識を振りまいていった, としか思えません.
しかも, 彼は証明の概念を持ってなかったらしいです.

photo credit: My life in Numbers via photopin (license)

Hardy-Ramanujan 数 Read More »

Kaprekar 数

全ての位が同じ数字ではない 4 桁の数は
各位の数字を並べ替えてできる最大の数から最小の数を引く計算を繰り返すと
最後には必ず 6174 になる.

この驚くべき事実は, インドの数学者 Kaprekar (カプレカ) によって発見され,
彼の名前をとって数 6174 を Kaprekar 数といいます.

試しに 1106 で計算してみました.
6110 – 0116 = 5994
9954 – 4599 = 5355
5553 – 3555 = 1998
9981 – 1899 = 8082
8820 – 0288 = 8532
8532 – 2358 = 6174
7641 – 1467 = 6174 !

尚, Kaprekar 数は 9 の倍数であることが分かります.
実際, 一般に 4 桁の数 bcad (a ≥ b ≥ c ≥ d) で考えると,
(最大数) = 1000a + 100b + 10c + d,
(最小数) = 1000d + 100c + 10b + a なので,
(最大数) – (最小数) = 999a + 90b – 90c – 999d となります.
この数は明らかに 9 の倍数ですね.

photo credit: Numbers via photopin (license)

Kaprekar 数 Read More »

代数は環ともいう

“algebra” の和訳は「代数」であり, 普通は「代数学」を思い浮かべるでしょうが,
algebra にはまた別の意味があります.

その別の意味では, “algebra” は日本語で「代数」または「環」と訳されます.
ここでいう環は普通の環ではなくて, 多元環のことです.

多元環 (結合的多元環ともいう) の定義を述べると,

体 K 上のベクトル空間 A が K 上の多元環であるとは,
A が環の構造を持ち, 積を与える写像 A×A → A が双線型であるときをいう.

多元環の例で簡単なものといえば, 行列環があります.
これは作用素環の1つですが, 作用素環論で重要なのは C* 環と von Neumann 環です.
また, 結合法則が成り立たないものは非結合的多元環といわれ,
その代表選手は Lie 環と Jordan 環です.

photo credit: Algebra via photopin (license)

代数は環ともいう Read More »