Mathematics

Brouwer の不動点定理

位相幾何学で登場する有名な不動点定理について書きます.

不動点とは, 文字通り
連続写像によってある点を移したとき, 自分自身へ移る点のことをいいます:
X を位相空間とし, f:X → X を連続写像とするとき,
f(x) = x となる点 x を f の不動点 (または固定点) という.

そして Brouwer (ブラウワー) の不動点定理とは,

Dn を n 次元球体とし, f:Dn → Dn を連続写像とするとき,
f は少なくとも1つは不動点をもつ,

というものです.

低次元について直感的に理解することにします.

・n = 1 のとき:D1 = [-1,1].
正方形の向かい合う辺を結ぶ曲線 f は必ず対角線 x = f(x) と交わる
ことから分かります.
また, この場合は中間値の定理を使って証明することができます.

・n = 2 のとき:D2 は普通の円板.
座標が描かれた2枚の紙があるとします.
一方の紙はそのまま置いておき, 他方の紙をクシャクシャにして2枚の紙を重ねます.
すると, 2枚の紙が少なくとも1つの同一点で重なり合う, といった感じです.
(他方の紙を縮小して重ねても良いです)

・n = 3 のとき:D3 は普通の球体.
容器内の液体を掻き混ぜれば, 混ぜた後の点で元の位置と変わらない点が
少なくとも 1 つ存在する, という感じです.
もちろん, 元の点を掻き混ぜた後の点へ移す写像は連続としています.

数学で不動点定理といっても, 幾つもあって
例えば Brouwer の不動点定理の一般化である角谷の不動点定理は経済学で登場します.

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しっくりくる読み方

皆さんは ”[0,1]” のことを何と読みますか?
私は ”区間 [0,1] (ゼロイチ)”と読みます.
これに対して ”[0,1] 区間”と読む人を見かけます.

後者のほうが読み易い感じがするし,
別に読み方なんてどうでも良いと思うかもしれませんが, ここで少し考えてみます.

[0,1] は区間でも端点 0,1 を含んでいるので閉区間です.
そこで, 2つの読み方に ”閉” をつけてみます.

1つ目はただ ”閉区間 [0,1]” となるだけです.
2つ目は ”閉 [0,1] 区間” なのか, それとも ”[0,1] 閉区間” なのか
という2通りの読み方が生じてしまい, 何だか変な感じです.

こういった事を考えると, 1つ目の読み方がしっくりきますね.

同じような例では,
t というパラメータは, ”パラメータ t” であって ”t パラメータ” ではない,
a の上に矢印がついたものは, ”ベクトル a” であって ”a ベクトル” ではない,
などがあります.

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全ての人はハゲである

有名な話なので知っている方も多いと思いますが, ジョークとしては面白いです.

今回はタイトルのとおり「全ての人はハゲである」という主張を
数学的帰納法 (単に帰納法ともいう) により一応証明します.

P(n) を自然数 n に関する命題とします.
数学的帰納法とは

(1) 出発点の P(1) は正しい
(2) 各自然数 k に対し, P(k) が正しければ P(k+1) も正しい

これら (1), (2) が成り立てば任意の自然数 n に対して P(n) は正しい, という論法です.

そこで先ほどの主張に帰納法を適用してみます.

(1) 髪の毛が 1 本の人は明らかにハゲである
(2) 髪の毛が k 本の人をハゲとすれば, k+1 本の人もやはりハゲである

よって, 帰納法により全ての人はハゲであるという事になります.

と言われても実際の感覚とは違うので, この議論のおかしな点を述べます.
帰納法とは自然数変数を含む「命題」を証明するための論法でした.

命題とは

正しいか正しくないかを客観的に判断できる主張

のことです.

例えば「富士山は日本で一番高い山である」は命題ですが, 「富士山は高い」は命題ではありません.

そこでハゲであるかどうかは主観的なため,
髪の毛が k 本の人はハゲである, ということは一概には言えません.

つまり「髪の毛が k 本の人はハゲである」は命題ではないので,
帰納法を適用するのは実は無理だったわけです.

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