線型代数を道具として使いたい人へ

三宅敏恒『入門線形代数』培風館, 1991.

本書の構成は高校数学の参考書そのもので,
初学者には分かりやすいと思います.
さらに色刷りが用いられていることから, 読み易くなっています.

また著者が述べているように,
本書は数学を道具として使いたい人への線型代数の入門書です.
そのため例題や問題は具体的なものが多く,
手を動かして計算することにより手法を身に付ける事ができます.

説明は実行列や R 上のベクトル空間に限っており,
必要最低限のことが書かれているので少し物足りない気がしますが,
全体で 148 ページと薄い本なので気軽に始められる入門書だと思います.

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読み易い多様体の本

松本幸夫『基礎数学5多様体の基礎』基礎数学5, 東京大学出版会, 1988.

多様体の入門書として, お薦めなのが本書です.
ページ数は 344 ページで多いと感じた割には, 分かり易く丁寧に書かれているため, 読みやすさは抜群です.

読むための予備知識としては微積分, 線型代数, 位相くらいで (微分方程式も少し),
位相については第 1 章の「準備」と第 4 章の途中で必要最低限の事は書かれているので,
特に知らなくても大丈夫だと思います.
多様体は位相空間のため, 抽象的でイメージがつかみにくいですが,
本書では直感的な図が豊富に載っており, 非常に理解の助けになります.

学部レベルでは本書で十分だと思いますが, 飽く迄も基礎に限られているので,
もう少し詳しく学びたい人はもう 1 冊くらい標準的な本を読むと良いでしょう.

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三角形の面積の求め方 (高校生版)

以前, とある教授から聞いた話です.
教授は大学入試で採点委員を任されていて, 数学 (文系) の採点をしていたとのこと.
その時に, ある問題の解答を見て, 非常に驚いたそうです.

問題:
曲線 y = x2 の点 P(a,a2) における接線と
点 Q(b,b2) における接線が点 R で交わるとする.
ただし, a < 0 < b とする. このとき, 次の問いに答えよ. (1) 点 R の座標および三角形 PRQ の面積を求めよ.

図は想像していただくことにします.
解き方を簡単に述べると, まず点 R の座標を求めて,
次に点 R を通る y 軸に平行な直線と直線 PQ が交わる点 R’ の座標を求めれば,

(三角形 PRQ の面積) = (RR’ の長さ) × (b-a) / 2

となって, 解答終了です.

このような解き方が簡単だと思いますが, 殆どの高校生たちは,
直線 PQ の式から点 P における接線の式を引いて, 点 P の x 座標から点 R’ の x 座標まで積分した値と
直線 PQ の式から点 Q における接線の式を引いて, 点 R’ の x 座標から点 Q の x 座標まで積分した値とを足す
という解答だったそうです.

何故, 皆揃って, このような面倒臭い解き方をしたんでしょうか…

photo credit: British Museum Tesselation via photopin (license)

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