Mathematics

単連結

2次元球面 S2 (我々が普段球面と思っているもの) 上にへばりついて生活している生物を想像しましょう.
つまり, その生物にとって, 球面が宇宙そのものです.

その生物を A と名付けましょう.

いま, A を囲む球面上の任意のループ (自分自身と交叉しない閉曲線) を考え, ループ上の1点 P を固定します.
A はループの内部にいますが, 点 P を固定しておいてループを連続的に変形させてどんどん広げていけば,
たちまち A はループの外部へ出てしまいます.
このことから, 球面上ではループの内部にいる A はループの外部にいるとも思えます.
逆も同様です.

ここで, ループの内部・外部という言葉を使いましたが,
それではループを赤道とすれば A は内部と外部のどちらにいるのか?
という問いが生じるので, そもそも球面上では内部・外部の区別は意味がなく,
ループは球面をただ2つの領域に分けると理解してください.

次に, 点 P を固定しておいてループを連続的に変形していくと, 点 P に縮めることが出来ます.
このとき, ループと点 P は互いにホモトープまたはホモトピックであるといいます.

一般にこのような性質が成り立つ領域は単連結であるといいます.

ちなみに, トーラスは単連結ではありません.

photo credit: Loops, I did it again. via photopin (license)

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RPG の世界

何気なく RPG (ロールプレイングゲーム) で遊んでいれば特に気付きませんが,
指摘されると「なるほど」と思ってしまうネタです.

RPG の四角いワールドマップを思い浮かべてみましょう.
まず, マップの上端と下端は同一視することが出来るので,
地図を丸めて上端と下端を貼り合わせると円筒を作ることが出来ます.
さらに, マップの左端と右端も同一視することが出来るので, それら両端を貼り合わせます.
すると, ドーナツ状曲面が出来上がります.

数学ではこの曲面をトーラスと呼びます.
つまり, RPG の世界は球ではなくトーラス (torus) ということになります.

ここからは少し専門的な話です.
トーラスが Lie 群の構造を持つことを述べます.

まず, 円周 S1 は Lie 群の最も簡単な例の1つで,
1次元ユニタリ群 U(1) と同型であることは直ちに分かります.
次に, 1次元トーラス群 TR/2πZ は加法群 R において,
2π の整数倍だけ異なる2つの元を同一視して生ずる群です.
イメージとしては, 1周すると 2π となる円柱に数直線をぐるぐる重ねて巻きつける感じです.
T は U(1) と同型であり,従って位相的には S1 と同相なので,
結局 T は S1 のことです.

さて, ドーナツは2つの S1 で表すことが出来るので T2 = S1 × S1 と書けて,
これを2次元トーラスといいます. 略して2-トーラスともいいます.
S1 は1次元 Lie 群だから, その直積もまた Lie 群となり,
2-トーラスは2次元 Lie 群ということが分かります.

photo credit: Villarceau Variations II via photopin (license)

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0.9999… = ?

無限に関するトピックを1つ.

0.9999…
と無限に小数点以下の 9 が続いていくと何になるでしょうか?

答えは 0.9999… = 1 になります.
この証明は無限等比級数の和を使うと簡単に示せます.

初項を a=9/10, 項比を r=1/10, 第n+1項までの和を Sn とすれば,

  Sn =   a + ra + r2a + r3a + … + rna,
rSn = ra + r2a + r3a + r4a + … + rn+1a

と表せるので, 2つの等式の各辺を差し引きすれば,
(1-r)Sn = a – rn+1a.

ここで, 0 < r < 1 であるから, n → ∞ とすれば, Sn → ∞ = a / (1-r).

よって, (9/10) / (1-1/10) = 1 となります.

photo credit: We were infinite. via photopin (license)

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