Mathematics

三角形の面積の求め方 (高校生版)

以前, とある教授から聞いた話です.
教授は大学入試で採点委員を任されていて, 数学 (文系) の採点をしていたとのこと.
その時に, ある問題の解答を見て, 非常に驚いたそうです.

問題:
曲線 y = x2 の点 P(a,a2) における接線と
点 Q(b,b2) における接線が点 R で交わるとする.
ただし, a < 0 < b とする. このとき, 次の問いに答えよ. (1) 点 R の座標および三角形 PRQ の面積を求めよ.

図は想像していただくことにします.
解き方を簡単に述べると, まず点 R の座標を求めて,
次に点 R を通る y 軸に平行な直線と直線 PQ が交わる点 R’ の座標を求めれば,

(三角形 PRQ の面積) = (RR’ の長さ) × (b-a) / 2

となって, 解答終了です.

このような解き方が簡単だと思いますが, 殆どの高校生たちは,
直線 PQ の式から点 P における接線の式を引いて, 点 P の x 座標から点 R’ の x 座標まで積分した値と
直線 PQ の式から点 Q における接線の式を引いて, 点 R’ の x 座標から点 Q の x 座標まで積分した値とを足す
という解答だったそうです.

何故, 皆揃って, このような面倒臭い解き方をしたんでしょうか…

photo credit: British Museum Tesselation via photopin (license)

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多項式と図形

平面 R2 上の 2 変数多項式 f(x,y)=x2+y2-1 を考えると,
この多項式の零点集合 (解の集合) は f(x,y)=0 の解, すなわち
{(x,y) ∈ R2   ;   x2+y2=1}
なので, それは原点を中心とした半径 1 の円であることは直ちに分かります.

上の例は次元が低いので, 図形をイメージし易いですが, もっと高次元を考えて,
Rn 上の n 変数多項式の零点集合もやはり何か図形を描いています.

一般に, Rn 上の有限個の n 変数多項式の共通零点集合, すなわち
{(x1, …, xn) ∈ Rn  ;   fi(x1, …, xn)=0  (i=1, …, k)}
Rn の部分集合として図形を描いています.
連立方程式 fi(x1, …, xn)=0 は代数方程式と呼ばれます.

このように, 一般に代数方程式を考える事 (代数) と
それが定める図形を考える事 (幾何) とは表裏一体であると言えます.

その点に注目して, 代数方程式を幾何的に捉えようとする分野が代数幾何であり,
代数方程式の零点集合は代数多様体と呼ばれます.

ところで, 上の代数多様体と代数方程式の関係はイデアルの言葉を使って言い換えることができます.
実数上の n 変数の多項式全体の作る環 R[X,Y] を A とすると, Rn に含まれる代数多様体 X の全体と,
A に含まれるイデアル I の全体との間には, 次のような関係があります:

  • 代数多様体 X 上で 0 となる多項式全体 I は多項式環 A のイデアルとなる,
  • 逆に, I を A のイデアルとすると, I の全ての多項式の共通零点集合 {(x,y)  ;  i(x,y)=0, ∀i∈I} は, 代数多様体になる.

また, 代数幾何では,
代数方程式の共通零点を閉集合と定めることにより位相が定義される,
Zariski (ザリスキー) 位相というものがあり, 代数幾何の基本的概念の1つとなっています.

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rational とは

”rational” が付いている数学用語といえば,
”rational number”, ”rational function” などがあって
それぞれ「有理数」, 「有理函数」と日本語訳されます.

しかし ”rational” は「比の」という意味で,
rational number と rational function は実際そのように書けます:
a/b, a と b≠0 は整数.
P(x)/Q(x), P と Q≠0 は変数 x に関する任意多項式.

では, 何故「理性の」と解してしまったのでしょうか.
私はその理由を知らないので, もし知っている方がいれば教えてください.

本来は「有比数」, 「有比函数」などの言葉が使われるべきだと思いますが,
今更訂正するわけにはいきませんね.

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